母子手帳をもらった日のこと|不妊治療を経てやっと掴んだ“命の証”

そらと過ごした日々

心拍が確認できてからの一日一日は、とても長く感じました。

「今日も元気でいてくれるかな」──そんな想いを抱えながら過ごして、ようやく迎えたこの日。

待ちに待った、母子手帳をもらう日でした。

不妊治療を続けてきた方なら、この日をどれほど心待ちにしているか、きっとわかってもらえると思います。

出産予定日が決まり、母子手帳を受け取ることを“許される”日。

私にとって、それは新しい命と正式に歩み始める日でした。

この日も、診察室のモニターには小さく動く心拍が見えて、ほっと胸をなでおろしました。

先生が真剣な表情で胎嚢のサイズを何度も測っていて、疑問に思っていると「この数値で出産予定日が決まるからね」と教えてくれました。

私は生理周期が少し短めで、一般的な“最終月経日からの計算”とは少し違うとのこと。

それでも、先生が伝えてくれた“予定日”を聞いた瞬間の嬉しさと安心感を、今でも鮮明に覚えています。

待望の出産予定日は、夏の終わり、秋の風が少しだけ混じり始める季節でした。

その後、予定日の書かれた紙を大事に抱えて、役所へ。

母子手帳を受け取るとき、職員の方との面談があり、手帳やクーポンの内容などたくさんの情報でキャパオーバーになりながらも説明を受けて。

そして最後に「出産に向けての目標」を書く欄があり、ここで記入してくださいとのこと。

迷わず書いた言葉は──

『母子ともに無事に出産を終えること』

きっと多くの人が、夢や希望を綴る欄なんだと思います。

でも、そのときの私には、この言葉しか思いつきませんでした。

それほどまでに、“無事”という言葉が、私にとって何よりの願いだったのです。

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