2025年の秋。長い夏がようやく終わりを告げようとしていた頃、私は16日間にわたる西日本への旅へと出かけました。
今回の旅は、観光や気分転換のためだけではありません。
出産予定日だった日が近づくなか、地元でじっとしていることができなかった──それが一番の理由でした。
「行ったことのない場所に行ってみたい。そして、そこで新しいものに触れて、少しでも成長した自分になりたい」
そんな気持ちに背中を押されて、私はハンドルを握りました。
旅のはじまりは、子授け祈願の神社から。そらを授かる前にも訪れたその場所で、再びお祈りをして「子宝草」をいただきました。掌にのせた小さな命のしずくのようなその植物は、まるで「また一緒に歩いていこう」と背中を押してくれるようで、私はその子と共に旅をすることにしました。
道中、車窓から移ろう景色を眺めながら、たくさんの“優しさ”に出会いました。
立ち寄った道の駅では、スタッフの方々が手作りしたポップや装飾から、訪れる人への温もりが伝わってきます。声をかけてくれた地域の方々からも、あたたかな心をたくさん受け取りました。ふと立ち止まって胸がじんわりする瞬間が、旅の中にいくつもありました。
そして旅の途中、久しぶりに再会した友人と訪れたUSJでは、日常の痛みも悲しみもすべてを忘れて、ただ思いきり笑って過ごしました。ハロウィンの賑やかな空気の中で、涙ではなく笑顔で顔が濡れる時間があることを、私は久しぶりに思い出したのです。
この旅は、私にとって“癒し”であり、“再出発”でもありました。
そらくんと過ごした日々は今も確かにここにあって、その記憶は消えることはありません。だけど、思い出を抱えて前を向くこともできる──そのことを、旅が静かに教えてくれたような気がします。

 
  
  
  
  

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